クリエイション・スープの楽しみ方
Guide To Creation Soup

 

クリエイションの初期50枚のシングルをまとめた記念碑的作品「クリエイション・スープ」。原盤番号はCRE100。本国では完全限定ボックス・セットとしてリリースされた本作の持つ意義は、作品そのものと同じく、ずっしりと重い。いったいなにが重いんでしょう……歴史的観点や本国での位置付けとは関係ない"個人史"として、クリエイション放談。題して"クリエイション・スープの楽しみ方"

●出席者(順不同、敬称略)
小山田圭吾/フリッパーズ・ギター
小沢 健二/フリッパーズ・ギター
瀧見 憲司/DJ・ライター

1991.9.21.  日本コロムビアにて

 

瀧見 : 2人がクリエイションを意識して聴き始めたのっていつ位なの。
小沢 : レーベルとして意識して聴き始めたのは確かプライマル・スクリームの「Crystal Crescent」位からかな。やっぱりジーザス&メリー・チェインのメンバーがやっているっていうのを聞いて、聴いてみたらガーン!って(笑)。
瀧見 : (1stの)「All Fall Down」は。
小沢 : ううん。後から。クリエイションも極初期ってジャケットとか超ちゃちくてダサかったから。
小山田: 初めて買ったのは『Wild Summer Wow』だったな。
瀧見 : クリエイションの2枚目のコンピレーション。あの地味なジャケットのヤツ。なんで買ったの?
小山田: 中古で見つけて、パステルズが入ってたから。パステルズは名前だけ知ってたんだけど、聴いたのはそれが初めて。
小沢 : パステルズって当時(85〜6年)向こうの雑誌にやたら名前だけは出てたじゃない、メリー・チェイン・フォロワー的なものとして。
瀧見 : でもレコードはあんまり入ってきてなかったんだよね。
小沢 : そうそう。でも雑誌とかみてるとパステルズが本当の親玉なんだってのがだんだん分かってきて、で『Wild Summer Wow』で初めて聴いた。
瀧見 : あれに「Something Going On」入ってるんだっけ。
小山田: そう、あと「Stay With Me Till Morning」。
瀧見 : パステルズって初めて聞いた瞬間にいいと思った?
小沢 : 曲にもよるけど、「Something Going On」とか普通に聴いてもいいじゃない。よくないか(笑)。
小山田: 俺いいと思った(笑)。
瀧見 :でも俺なんかあれを当時聴いていても、単に曲が書けないガシャガシャしたバンドとしか思わなかったよ(笑)。だってさぁ、いわゆる80年代頭のネオ・アコースティックとかと比べるとソングライティングとか何からもう次元がちがうじゃない(笑)。ヘタクソさの次元がちがうというか(笑)。当時はまだギター・バンドというとネオ・アコっていう見方があったから異常に違和感があったなぁ。
小沢 : 瀧見さんそれ前から言ってるよね(笑)。それは良くわかる(笑)。ソングライティングなんかガクッと落ちる(笑)、もう比べるもんじゃないでしょ。でもなんかよかったんだよなぁ(笑)。
小山田: やっぱ味だよ(笑)。「Something Going On」は超好き。そのタイトルでロリポップ・ソニック、ライブやった位だからな(笑)。
小沢 : でもパステルズ問題は奥が深いからなあ(笑)。いまやジョイ・ディヴィジョン説っていうのがあるからなあ。
瀧見 : それはあるよ。フリッパーズ・ギター・ファンのいたいけな少年少女が『フリッパーズが歌にしてる位だから(「Goodbye Our Pastels Badge」)聴いてみよう』とか思って『Suck On』(クリエイション時代のシングル編集盤)買っていきなり「Baby Honey」聴いてどう思ったのか俺は知りたい(笑)。
小山田: 「Baby Honey」!(笑)。あの曲はナゾだ。『Suck On』には何故か2ヴァージョンも入ってるし。
瀧見 : アレ聴いて普通にいいと思うかなぁ(笑)。
小沢 : でもパステルズはいったんはまると抜け出せないからな(笑)。メロディがくねるんだよ。
瀧見 : 「Million Tears」とかはポップ度高いと思うけどね。
小山田: 「I'm Alright With You」とかも、本当いいんだよ(笑)。メロディーとか変だけどさ。あと、声だよやっぱ。下手の次元を超越したアレがやたら良かった(笑)。普通じゃレコードにならない次元だよ。でもガッと来ちゃうんだよな。
小沢 : でもパステルズは、僕たちがみんなに悪影響与えているのは認めるけど、本当に好きだった。
小山田: 曲とかも好きだったんだけどさ、後、独特のナヨリ方がよかった(笑)。
小沢 : 込められたものが良かった、なんだかわからなかったけどね(笑)。でも確かにパステルズ問題は一線を引かなきゃいけないんだよな。アズテック・カメラとパステルズを突然同時に聴く人いっぱいいるんだろうけど、それは本当全然違うものだからね。百万光年位違うぞ(笑)。でもこういう閉鎖的発言も”ネオ・アコ”のうちと認めていただいて。あぁ、こういう事言うと嫌われるんだ(笑)。
瀧見 : 「何よ、ちょっと昔から知ってるからって偉そうにしないでよ」って。
小山田: でもしょうがないんだよ(笑)。嫌われるけどしょうがないんだよ(笑)。
小沢 : 瀧見さんなんかネオ・アコって言葉、もう反語にしか使ってないもんね(笑)。
瀧見 : でもしょうがないんだよ(笑)。
小沢 : 助けてくれぇって(笑)。
瀧見 : (笑)。でもどうでもいいけどいきなり何の話してんのかわかんなくなってるんですけど(笑)。『Wild Summer Wow』の話からいきなり脱線してるぞ。
小沢 : 『Wild Summer Wow』といえばロフトの「Winter」もいい曲だよね。ララララ〜 (うたう)って。でもああいうエレキ・ギターもろライン録りっぽい悲しい音っていうのがポイントでさ。
瀧見 : あの異常なまでのチャチさね。
小山田: 当時はネオ・アコとしてとらえたけどやっぱり全然違うものなんだよな。
瀧見 : 完全にそれ以降のものでしょう。音自体は前からあったんだけどさ。後、やっぱりジーザス&メリー・チェインの影響がデカいんじゃない?
小山田: メリー・チェインどう考えても凄かったな。
小沢 : でもその前にクリエイションのLP第一弾の「Alive In The Living Room」とかあるんだけどさ(笑)。あれはそういうの全ての元祖だよね一応。音最悪でさ、中身聴くのツライけどさ(笑)。
小山田: クリエイション一派の元祖、TVパーソナリティーズとか入ってるんだけどさ。
小沢 : でも初期のポップTVじゃなくてウンコTVなの(笑)。長くてダルイっていう。
瀧見 : メンバーのジョー・フォスターもスタッフだったから、クリエイション0番台とかTV’s関係多いよね。
小山田: ほとんどそうなんじゃないの。でも当時ここら辺のレコードって見たこと無かったよな。全然日本に入って来なかったんじゃないかな。何故かレヴェルティング・ペイント・ドリームは持ってんだけどさ。
瀧見 : じゃ、パステルズとか、その後でシングル見つけて買ったりしてたわけ? 「Million Tears」の頃とか?
小山田: そうそう。
小沢 : 多分1,2年遅れてるんだけど、「Crystal Cresent」ぐらいの時期に初期のやつも聴くようになったんじゃないかな。
瀧見 : クリエイションの初の12インチ・シングルが「Million Tears」で、その次がロフトの「Up The Hill & Down The Sloap」で、スローター・ジョーとかも12”で出て、プライマルの「Crystal Cresent」位から日本の輸入盤屋でも普通に出回るようになったんじゃないかな。
小山田: ここら辺からクリエイションってレーベルとして認知され出したっけ。
小沢 : だから、その前にメリー・チェインの1stがあってさ。
瀧見 : CRE 012
小沢 : ジャケットの色がブルーとか黄色とか赤とか。
小山田: ピンクとか黒もあるんだよ。あと、ダグラスのベースのペイントしてあるヤツっていう。
瀧見 : あれはジャケット違いの再発盤。
小沢 : 日本盤LPのオビが、何だっけ、『ラジオは鳴った、一度だけ、そして次の週のチャートは全て1位だった』とか言うヤツ。
瀧見 : ホントかよ(笑)。でもカッコよかったよな。
小沢 : カッコよかった(笑)。正にピストルズ以来の衝撃だった(笑)。本当に雑誌にそう書いてあったもん(笑)。
瀧見 : 暴動騒ぎっていうのがあったよね。
小山田: それでライブが20分で終わってしまったという。
小沢 : いや違う。それは後から来た情報で。
瀧見 : ライブで暴動が起こった! それは何故かというとライブが短かったからという(笑)。で、そのライブの暴動の部分だけというか客の声だけ収めたレコードというのがあって(笑)。その名もフィース(サギ)レコードから出ている「Riot EP」。初回注射器付きの7”で、その後CD化されて(笑)、さらに今年になってからボックス入りで再発売までされたという(笑)。
小山田: まさにサギ・レコード(笑)。売れてんのかな(笑)。
小沢 : CDにすんなよそんなもん(笑)。
小山田: やっぱ暴動はいい音で聴きたいとかって(笑)。
瀧見 : でもメリー・チェインはクリエイションからデビューして、すぐにブランコ・イ・ネグロいってシングルぽんぽん出したでしょ。
小沢 : シングル全部凄かったよね。ガンガン来たよね。
小山田: LPまでの勢いが凄くて、本当に衝撃的だった(笑)。で、ジーザスっていうとクリエイションっていうイメージがついたんだよ。
瀧見 : それでなんとなくレーベル買いしはじめて、X−メンとかファイブ・ゴー・ダウン・トゥ・ザ・シーとか買って爆発した事もあったんですけど(笑)。
小山田: 何だこれって(笑)。10番台くらいはなんとなくメリー・チェイン・フォロワー色が強いよね。
小沢 : でも本当は違うのであった(笑)。
瀧見 : パステルズのほうが先や!(笑)。
小沢 : TV'sの方が先や!(笑)。
小山田: でもミート・ウィップラッシュとか完全なフォロワーもいたよ。
瀧見 : アレはモロだったよな。単に似ているだけだったけどあのギターはやっぱりカッコよかったよ。
小山田: ギュワ〜ン、ギュイ〜ン!(笑)。でもそれでよしって感じで(笑)。
瀧見 : あのバンド、シングル1枚だけで消えたけどどこへいっちゃったんだろうね。そういえばこのシングル・ジャケットが1stプレスと2ndプレスで違うって知ってた? 超オタッキーな話しだけどさ。裏ジャケットの写真が違うんだよ(笑)。
小沢 : 知らねえよそんなもん(笑)。
瀧見 : なんかついどうでもいい話しばっかに流れがちだな(笑)。
小山田: ジョー・フォスターがやってたスローター・ジョーもフォロワーっぽいあつかいだったけどカッコよかったよな。
小沢 : 「I'll Follow You Down」!
瀧見 : 後、あのクリスマス・シングル「She's So Out Of Touch」。オルゴールとか入って可愛い曲。
小山田: そのレコードのスペシャル・サンクスにやたらそれっぽい人が載ってるんだよね。プライマル・スクリームにソニック・ユースとか、マイ・ブラディ・バレンタインとかフラー!とかまで。後、この頃のクリエイションっていうとボディーンズが。
瀧見 : 超ポイント高い! 1stの「God Bless」はなんかバニーメンっぽかったけど、2nd、3rdがメチャクチャいいんだよね。
小沢 : 「Therese」と何だっけその次。
瀧見 : 「Heard It All」! チャンチャチャランチャッチャ(うたう)。あれ、でもなんでコレ、この中(クリエイション・スープ)に入ってないんだろう。
小沢 : 変だね。
瀧見 : あ、そうか、多分彼らマグネットへ移籍した時に再録してるから、その時に出版権も向こうにいっちゃったんじゃない? ジーザスと同じパターンで。
小沢 : あ、そうか。惜しいな。
小山田: ジャスミン・ミンクスとかもコード3つ位しかなかったけど(笑)、「Cold Heart」とかは一応当時名曲とされていたよな。
瀧見 : ロフトがウエザー・プロフェッツに名前変わったのもこの辺だったよね。クリエイションの3枚目のオムニバス『Different For Domeheads』の裏ジャケットにそのことが書いてあって、そんで「Almost Prayed」が出るの。あと「Crystal Cresent」並みにガーンと来たのがビフ・パン・パウ!の「Love's Going Out Of Fashion」。
小山田: あれはチョーいい。
瀧見 : ここら辺でレーベル・カラーと中身のクオリティが一段上がった感じしたよね。
小山田: そんでいきなりフェルトとかも移籍してきて、おーっ、とか思った。「Ballad Of The Band」とか本当よかったもんな。
瀧見 : フェルトはチェリー・レッドの時よりもクリエイション来てからの方が好きだな。
小山田: 俺もマーティン・ダフィ入った後のクリエイション時代の方が好きだな。シングルのB面とかインストのアルバム(『Let The Snakes Crinkle There Heads To Death』)はよく聴いてた。
瀧見 : ここら辺が初期クリエイションの充実期って感じでしょう。ここら辺のシングルを集めた4枚目の編集盤『Purveyors Of Taste』とかでレーベルの知名度もかなり上がった感じしたけどね。あのジャケットがダッチワイフのやつ。
小沢 : その頃だよね、『C86』とアノラック・ムーブメント。僕なんかさ、向こうにはそうゆうやつ一杯いるんだとか思ってさ、はりきってアイスクリーム食べて、チュッパ・チャップスくわえてペニー・アーケードのライブとか見にいってたんだよね。パステルズのバッジも作ったりなんかしちゃってさ。
瀧見 : レコード・ミラーで特集もされてたんだよね。
小沢 : キューティーズ特集ね。あの頃とか本当に向こうの新聞とかよく読んでた。
小山田: 今出世してるバンドとかって、結構ここらへんからっていうのが多いんだよね。
瀧見 : 『C86』年組。周辺も含めてね。スープ・ドラゴンズ、プリミティヴスとか、ウェディング・プレゼント、パステルズ、プライマル・スクリーム、マイ・ブラディ・バレンタインとか。
小沢 : ここら辺の時代って。今挙がったようなバンドの台頭期っていうか、何か、確実に今につながってるよねソングライティングの部分でも何か確率してきたなあっていうか。皆積み重ねでさ。パクリ合いで良くなるっていうか(笑)。
瀧見 : ビフ・バン・パウ!とかプライマルとかバーズと殆ど同じフレーズ使ってたもんなあ。「こんな事やっていいのか」とか思ってる内にそれが当たり前になってたという(笑)。
小沢 : 誰かがやったのを見て、それでまた真似するヤツがいるという(笑)。
瀧見 : 後、当時ってはっきり言って各バンドの違いがあまり分からなかったでしょう(笑)。単にギターがガシャガシャ鳴ってるヘタクソ・バンドって感じでさ。今だったら全然違うのだってすぐわかるし、そんな事絶対思ったりしないけど。
小山田: それはあるよね。録音のチープさでもう全部一緒(笑)。でも好きなの(笑)。
小沢 : 情報が無かったからね。新聞の片隅の小さな写真とかで「オーッ、このバンドはこんな顔してんのか」とか、「アノラックはボビーが元祖だったのか」とか。スティーヴン・パステルがアノラック着た理由ってのが、ボビーが着てたからっていう(笑)まあ、そんなレベルの話しなんだけどね(笑)。
瀧見 : 本当ゴシップ記事の最後の2行って感じ(笑)。
小沢 : ボビーとかのインタヴューたまに載る事あったけど、あの頃のボビー、シャイさが激烈しててさ、「歌詞は本当に君が書いてるのか」って質問に「いや、他の皆がなまけてるから僕が書くだけ」って(笑)。
小山田: 今なんか率先して「俺が俺が」って感じだけどね(笑)。
小沢 : 「皆な集まれ、あぁ」(笑)。
瀧見 : 「一晩中踊り明かそう」(笑)。根はどう考えてもシャイなんだけどね。
小沢 : もう考えすぎて炸裂してるっていう(笑)。
瀧見 : やっぱ"セカンド・サマー・オブ・ラヴ"とかで転換しちゃったのかね。そんで「Leave Me Alone」(「Velocity Girl」の一節)が「Come Together」になっちゃった。のかな(笑)。
小沢 : 「Leave Me Alone」抜きで「Come Together」は理解できんよ、やっぱ。
小山田: 「一人にしといてくれ」から「皆な集まれ」だもんな(笑)。
瀧見 : 「Leave Me Alone」っていうフレーズはクリエイションの根っこを象徴するもんだからね。「Verocity Girl」本当いい曲だな。あれレコードだとすぐ終わっちゃうけど、ライヴだと倍あるんだよね(笑)。
小山田: あとプライマルはその頃の未レコード化曲というか未発表曲が一杯ある。「Crystal Cresent」の路線でLP1枚作れる位の曲があるんだよな。
瀧見 : 今年スプリングフィールズがサラからのシングルのB面でカヴァーした「Tommorow Ends Today」とか。
小沢 : あんな名曲を発表しないなんて信じられない。普通一生演奏するぞ(笑)。ジョン・ピール・セッションのテープ聴いたとき、本当に驚いたもんね。本当いい曲一杯あるんだよ。
瀧見 : あれだけの数々の名曲をボツにするなんて本当に狂ってるとしか言い様がない。何でだろうね。エレヴェイションとの契約が決まったからとか、路線変更の途中でやんなったとかなのかな。
小沢 : やっぱり飽きるのが昔から早かったんだろうな(笑)。
小山田: 1st(『Sonic Flower Groove』)には少し入ってるけどな。
瀧見 : そうか「Leaves」とか。でも「Imperial」とかも全然ヴァージョンが違うんだよね。だから頼むから当時のジョン・ピールとジャニス・ロング・セッション出して欲しい。
小山田: クリエイションからもう1枚シングル出してもおかしくなかったのにね。色々あったのかな。「Crystal Cresent」と「Gentle Tuesday」(エレヴェイションからの1枚目、通算3作目のシングル)の間の空白の1年(86〜87)っていうのが重要なんだよ。ライヴはやってたんだけどな。
小沢 : 「Do You Want Me Now?」とかいい曲なんだよなぁ。
瀧見 : もう絶対やんないだろうな。
全員 : もったいないもったいない(笑)。
小山田: そう言えば、その頃ボビー、メリー・チェインのドラマーもやってたんだよな。
瀧見 : エレヴェイション決まったからメリー・チェインやめたのかな。
小沢 : そこら辺もよくわからないよね。
瀧見 : 後、エレヴェイション関係っていうとウエザー・プロフェッツのクリエイションからの2枚目のシングル「Naked As The Day You Were The Born」はWEAから金もらって作ったって誰かが言ってた。エレヴェイションの話し聞く前にウエザー・プロフェッツがWEAと契約したって聞いてて、「おぉ凄いな」って思ってたらいつの間にかレーベルごと行っていたという。
小沢 : あのシングル、プロデュースがレニー・ケイ(元テレビジョンズ)だしね。
瀧見 : で、アラン・マッギー、エレヴェイションの方を一生懸命やるんだけど、悲しいことに結果は失敗に終わってしまうんだよね。わずか1年で。
小沢 : エレヴェイションのレコード本当に全部よかったんだけどね。悲しかったよ。
瀧見 : で、この辺の時期ってクリエイションのレコードと一緒にエルのレコード買ってなかった? たしかフェルトが移籍してきた頃にチェリー・レッド傘下になってからのエルのシングル4枚一ぺんに出たんだよ。ルイ・フィリップとかモーマスとかキング・オブ・ルクセンブルグとか。
小沢 : でも僕なんかエルがでたばっかりの頃は断然クリエイション派だったんだよ。っていうかパステルズなんかにズボハマリだったから。
瀧見 : 俺なんか比較して、エルの方が曲書けるしオシャレだから断然いいなぁとか思ってたけど(笑)。プライマルとかは別格だったけどね。チャチイのも好きだったんだけど。
小沢 : いや、なんか当時はチャチクないと信用できないという位、パステルズみたいの好きだったから。
瀧見 : 俺は違うもんね(笑)。わりとオシャレ、それもカタカナで書くオシャレ路線でさ、やっぱルイ・フィリップの方がいいって感じだった(笑)。なにしろカルマとルイ・フィリップとシャーデーが一緒だったからね(笑)。
小山田: 観葉植物かなんかある部屋できいてたっていう(笑)。俺なんかその頃アンチ・ファッションだったから。
小沢 : 僕はその頃"英国音楽"に(ファンジン)で暴言吐いてて。「エルはオシャレできどってるからやだって」(笑)。
瀧見 : あなた、その後の展開は何なの、その後の展開は。説得力、信用度ゼロだよ。
小沢 : ハハハ。
小山田: 俺はでもエル支持派でキング・オブ・ルクセンブルグとか凄い好きで。あれは当時のクリエイションとかにも通ずるものがあった。
瀧見 : でも俺はオシャレなのが好きだったんだよ(笑)。
小沢 : 瀧見さん超自虐的になってるね(笑)。でもその辺微妙に揺れ動く感じではあるよね。特に日本人の受けてとしては凄くあるよね。
で、僕なんかいつの間にかエルの方が超好きになったりしてるの(笑)。
小山田: 俺もそう(笑)。勿論クリエイションのも好きで聴いてたんだけどさ。なんかエルにズボズボハマっていった瞬間っていうのがあったなあ。
瀧見 : そうすると古いものの聴き方が変わるんだよね。
小山田: チャチイ初期クリエイションとか聴いてる時はバーズとかキンクスとかラヴとか、なんかギター・バンドっぽいのを聴いてたけど、エルを意識して聴きだすと、いきなりA&Mとか純粋ポップスとかにいっちゃってメチャクチャ新鮮な思いをした覚えがある。
瀧見 : 今じゃ当たり前だけどさ、あの頃が、昔のものを新譜と同じ感覚で聴くというのを体験した最初なんじゃない。
小沢 : いわゆるニュー・ウエーヴ時代って、古いもの聴けないっていう風潮がなんとなくあったからね。聴いても無理やりいいと思い込まなくちゃいけないみたいな強迫観念みたいなものがあったから(笑)。
瀧見 : そういう意味ではエルとかクリエイションの影響ってメチャクチャ大きいでしょう。日本の場合は。なんか色々な意味で本当にハマッてたぞ。オシャレだったしさ(笑)。でも当時は変なやつにそういわれるのは絶対イヤで、「安っぽくオシャレなんて形容すんなよ。」とか思ってたんですけど(笑)。
小沢 : (笑)。でもホント、エルとかクリエイションのとらえ方については日本の聴き手の問題としか言えない事情があるね。向こうでは全然違うものだからね。
瀧見 : 向こうのシーンとか背景そんなのと全然関係ない次元で、べつの機能をしてしまったんだよね。
小沢 : それでなんか変な状況ができてしまったという(笑)。
瀧見 : だからエルからクリエイションに移ったモーマスなんかさ、
小沢 : 最高のオシャレさ(笑)。
瀧見 : ガハハハ、でも本当にモーマスのクリエイション移籍第一弾シングル「Murders, The Hope Of Women」って、ジャケットも含めて本当に良かったな。
小山田: オシャレで?(笑)
瀧見 : もう言わないって(笑)。
小沢 : でもジャケット、オシャレだった(笑)。でもモーマス、ひねくれててキラわれものとか言われて。
瀧見 : マイク・オールウェイ(エルのオーナー)にインタヴューしたとき時も言ってたけど、確かにそういう所はあったんだろうけど、接点はあっても存在基盤が違うって感があるじゃない。究極の「Leave Me Alone」状態みたいなところとかさ。やっぱりそういうところも含めて存在の仕方がカッコイイと思うけど。
小沢 : ちょっとカリスマ的。で、モーマスはクリエイションからのLP超良かった。
小山田: 『Poison Boyfriend』(2nd)! あの中の「Situation Comedy Blues」は、
小沢、瀧見: 死んだ!って感じ。
小沢 : 後『Tender Pervert』(3rd)もクオリティ超高い。
瀧見 : ジャケットが本当いいよなアレは。
小沢 : モーマスも過去に開かれてたよね。なんか70年代っぽいものとか。デヴィド・ボウイ的なものとか、
瀧見 : (4th)なんかで思ったけど、ハズし方とハメ方のバランスが異常に優れてるんだよ。カッコイイ。
小山田: 後、クリエイションってこの時期、移籍組多いよね。やっぱフィル・ウィルソンとか。
瀧見 : 元ジューン・ブライズ。ソロ第一弾でもある「Waiting For A Change」は感動の名曲だったよな。バックがトリフィズのメンバーでプロデュースがメイヨ・トンプソン。なんか雰囲気がブルーベルズの「Young At Heart」に似てない?
小山田: ちょっとカントリーっぽいの。今迄のクリエイションの音とはちょっと違う。
瀧見 : なんかクリエイションが変化しつつあるというか。一段落して何か別のものになりつつあるっていう感じが凄いしたな。現KLFのビル・ドラモンドのソロとかも似たような印象がある。「King Of Joy」は超イイと思うな。
小山田: ニッキ・サドゥンとかも本来ならちょっと異色なんだけど、なんとなく収まってるって感じ。なんかレーベルの中心バンドがいなくて、周辺バンドが充実してた時期っていうか。ジャズ・ブッチャーとかも来るんだよな。
小沢 : それで一応救世主的な存在としてハウス・オブ・ラヴが登場するんだよね。「Shine On」はいい曲だけど、なんかちょっとニュー・ウェイヴ流れっぽいって思った。
小山田: なんかあまり好きじゃなかったな。それよりもマイ・ブラディ・バレンタインだよ。でも「You Made Me Realize」、これに入っていないんだよな。
瀧見 : アレはCRE055だから。ハウス・オブ・ラヴは正当派ニュー・ウエイヴ流れって感じだよやっぱり。3枚目の「Christine」とか凄くいい曲だけど。後、この頃、フェルトの個人的最高傑作シングル「Final Reesting Of The Ark」がで出てるんだよ。ジングルっぽい小曲も入ってて、フェルト円熟期の傑作って感じ。
小沢 : フフフフ〜ン(ハミングする)
小山田: 短い曲とかいいんだよね。
瀧見 : アレが俺のオシャレなコンピ・テープの最後に入るんだよ(笑)。
小沢 : (笑)。でもアレは本当いい。
瀧見 : ヴァイヴとピアノだけのアルバム『Train Above The City』もよく聴いたな。とにかくこの時期のフェルトは素晴らしい。あとエミリーとかアップル・ブティックも忘れられない(笑)。
小沢 : エミリーのシングルがCRE050か。この後マイ・ブラディ・バレンタインの「You Made Me Realize」といった画期的名作品とか出て。
瀧見 : パシフィックとかレイザーカッツとか地味だけどいいとしか言えないようなバンドも出したりして、その後はプライマルの「Loaded」が象徴する世界へと突入してイマの何でもあり状態に続くワケだけど、このクリエイション・スープを聴く、っていうか曲目見てるととさ(笑)、なにか凄く胸にくるものがあるでしょう。それは何でしょう。
小沢 : (笑)。うーん、だからパステルズとかにしてもそうだけどださ、何を聴いていたかって言うと、アレが持つムードとか、そういうものが好きだったんだよね。
瀧見 : ジャケットとかそこから出る雰囲気とか、全部ひっくるめてね。エルとかにしてもそうだったけど、それを聴いている自分を客観視して悦には入ってたというの絶対あったからね。コレを聴いてる俺は何てカッコイイんだとかさ(笑)。
小沢、小山田: それは、あったよね(笑)。
小沢 : パステルズ聴いててカッコイイ自分っていうのは確かにあって、そういうのは強かった。誰も聴いていないっていう(笑)ちょっとイジケタところが異常にマッチしてさ。貧乏くさいとことか、やる気あるんだかないんだかわかんないとことかで、ハマッたよね。
小山田: 完全に聞き手個人の問題なの。
瀧見 : 何か訳わかんないけどよかったってヤツ(笑)。
小山田: 純粋に好きだったって本気で言えるもんだったし、人に勧めるとか、客観的にみていい曲とか完成度が高いとかそういうんじゃない次元で確実に共有するものがあったんだよ。それはそれを演っているミュージシャンとかさ、一緒に聴いてる友達とかさ。
瀧見 : 後はそれを聴いてた時の自分の年とか状況とかっていうのも重要でさ、なんか変な言い方だけど多感な時期だったからこそハマッたっていうのも絶対あるでしょう。ああいう思いは、今からじゃ絶対出来ないと思うよ、正直言って。
小沢 : ああいう存在のものはね。
小山田: みぞおちには、こないだろうな(笑)。
小沢 : 自分にとってはね。
小山田: あれより全然いい音出しても、そういう風にはならないもんね。
瀧見 : まぁ、時代と個人の関係なんだけどさ。
小山田: そういうのは、誰にでもあるんだろうけどさ、でもそれがパステルズっていうのも(笑)。
小沢 : (笑)。だからさ、僕たちはさ、
小山田: 何かストーンズに育てられました、とかいうとさ、
瀧見 : カッコイイよね(笑)
小山田: でも全然そういうんじゃないじゃん。
瀧見 : 君ら2人はパステルズ(笑)
小沢 : そうなんだけどさ(笑)でもホントこれウソじゃなくて、純粋にそうだった。
瀧見 : そういう曲も作ったしね(『Goodby Our Pastels Budge』)
小山田、小沢: アレはね(笑)。
小沢 : 別に大上段のつもりとか全然なかったけど、あれは一応、世代の、何て言うか…
小山田: オトシ前。
小沢 : 今となってはテレもなく言える自分が恥ずかしいけどね(笑)。
瀧見 : 今だとアレ歌えないんじゃないの。やりにくいって言うか。
小山田、小沢: (笑)
瀧見 : 今にどっかのバンドが「Goodby Our Stone Roses Hut」とか出すのかな(笑)。
小沢 : それいいよ(笑)、カッコイイ(笑)。
小山田: ストーン・ローゼズとかだったらカッコイイよね。でも俺らパステルズ、瀧見さんオシャレ(笑)。チキショウ、なんか情けないところに生まれてきちゃった(笑)。
瀧見 : スキ間(笑)。
小山田: ピストルズがどうのこうのっていうのもないしさ。メリー・チェインがピストルズ以来の衝撃!とか聞いてさ、全然体験してないのに「コレがピストルズ以来の衝撃かぁ」って衝撃うけてるからね(笑)。
瀧見 : すぐ揚げ足とりたくなるしな。なんか自ギャク的だし。
小沢 : 世代だからね(笑)。それに世代の音。
瀧見 : 音もさ、昔の焼き直しとかいう感覚とか全くないじゃん。音楽明るいけど性格暗いしさあ。
小山田: そうなんだよ(笑)。ヒトは暗いんだけど音楽明るいの(笑)。
瀧見 : そんで、アンチ・ファッションなの(笑)。でもそれも一つの、まぁなんていうか、ファッションなの(笑)。
小沢 : まぁそこら辺はポストカードなんかとも通ずるものがあったんだけどね。ポストカードとかっていうのは僕ら完全に後追いじゃない。情報というか伝説だけがのこって、でも音はない。あっても中古盤屋のカベの高いとこに張ってあるって感じ。クリエイションはホント、ばっちり同時進行って感じだったからね。
瀧見 : だからね、このブツ、っていうかクリエイション・スープは、その同時進行の部分が全て入ってるわけだから。
小山田: ワープしてるみたいなもん。
小沢 : 僕らなんかにしてみれば、ポストカードが突然CD編集されたみたいなもん、って言うか。いきなり全部聴けちゃうんだもん(笑)。考えてみたらスゴいよ、コレ。
小山田: 僕らなんかにしてみたら思い出みたいなもんなんだけどさ、でも、コレをいきなり初めて全部聴いちゃうっていうのも凄いものがあるな。自分だってこんなの正直いって全部持ってないしな。
瀧見 : 色々な意味での記録と、それから当時を知らない人にとっての全く新しい未知の世界と、アラン・マッギーの歴史が同等にあるっていうかね。だからコレ考えてみたら凄いものなんじゃないの。
小沢 : ここら辺あっての「Come Together」っていう意味でもね。やっぱこんなものが日本盤でるなんて有り難い事なんじゃない。
小山田: やっぱり凄いことなんだよ(笑)。なんかカッコイイ、コピーみたいなのつけてよ。
瀧見 : 過去と未来が交錯する歴史的な箱!
小沢 : 何だそれ(笑)。
小山田: でも意義深いよ。だって、当時こんなもの出てくるなんて、しかも日本盤で出るなんて死んでもおもわなかったじゃん(笑)。
小沢 : アラン・マッギーも涙流してるよ絶対(笑)。
瀧見 : 俺も流しているんですけど(笑)。
小山田: 俺も(笑)。
小沢 : 俺も(笑)。
瀧見 : こんなんでいいのかね。
小沢 : いいんじゃない(笑)。
小山田: いいんじゃない(笑)。


(1999/10/07)
細かな訂正(1999/10/13)
行間挿入(2000/02/29)